「障がい」と「仕事」「就職」について
障がいのある方が、自立した自分らしい生活を送っていくうえで参考になる情報をまとめました。
「障がい自体に対する情報」や、「障がいを理解した上での仕事選びと仕事をする上でのポイント」に留まらず「就職活動に向けた対策」や「実際に就職された方の事例」も取り上げております。
また、「就職された後どのように過ごされているか」についても掲載しております。
上記以外にも「お役立ち情報」として「障がい年金」や「障がい者手帳」などの情報も掲載しております。
このような情報が、一人でも多くの皆様のお役に立てれば幸いです。
目次
障がいの種類について
精神障がいとは
精神障がいとは、何らかの脳の器質的変化あるいは機能的障がいが起こり、さまざまな精神症状、身体症状、行動の変化が見られる状態です。つまり、精神障がいは「気持ちの持ちよう」といった精神論的な状態ではなく、「脳の病気」として生じている状態です。
精神障がいは主に、統合失調症、気分障がい(うつ病・双極性障がい)、全般性不安障がい、強迫性障がい、適応障がい、てんかんなどがあります。
症状は同じように見えても、その背景にある病気の状態はさまざまで一括りにすることはできません。
※発達障がいは、障害者総合支援法では「精神障がい」に含まれます
発達障がいとは
発達障がいの詳しい原因はまだ解明されていませんが、親の育て方や本人の努力不足ではなく、先天的な脳の機能障がいが原因であるとされています。
物事の感じ方やとらえ方が異なっているため、とても得意なことがある反面、ちょっとしたことがすごく苦手というような能力の偏りがあります。
主に自閉症スペクトラム障がいや、学習障がい(LD)、注意欠如・多動性障がい(ADHD)、などがあります。
なお、発達障がいは、複数の障がいが重なって現われることもありますし、障がいの程度や年齢(発達段階)、生活環境などによっても症状や困りごとは違ってきます。
身体障がいとは
身体障がいとは、先天的あるいは病気や事故の後遺症といった後天的な理由により、身体機能の一部に障がいが生じている状態のことをいいます。身体障害者福祉法において身体障がいは「視覚障がい」「聴覚又は平衡機能の障がい」「音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障がい」「肢体不自由」「内部障がい(心臓や腎臓等の機能障がい等)」の5つが定められており、身体障害者手帳の交付を受けることで各種の障がい福祉サービスを利用できるようになります。
難病とは
「難病」は、医学的に明確に定義された病気の名称ではありません。難病と一言でいっても、病名や症状は多種多様です。
障がい者総合支援法上は、「治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障がいの程度が厚生労働大臣が定める程度である者」と規定されています。
難病のある人が仕事をするためには、治療や疾患管理と仕事を両立させることが不可欠です。そのためには、「無理なく活躍できる仕事を選ぶこと」「通院や休憩等の業務調整について職場の理解と配慮を得ること」「自己管理と職場での対処スキルを身に着けること」が重要です。
障がいの具体的疾患について
精神障がい
統合失調症
「幻覚」や「妄想」といった症状(陽性症状)が特徴です。その他にも、意欲や集中力の低下、人付き合いを避け引きこもりがちになる、などの症状(陰性症状)がみられ、様々な生活のしづらさが表れます。考えがまとまりにくく、言いたいことが分からなくなったり、相手の話の内容がつかめなくなったりという認知や行動の障がいもあります。薬物療法や社会との接点を保つことなどが治療となりますが、症状が強い時には無理をせず、しっかりと休養をとり、医療機関の治療を継続することも大切です。
気分障がい
気分の波が主な症状として表れます。うつ状態だけが表れるときは「うつ病」といいますが、うつ状態と躁状態を繰り返す場合は「双極性障がい(躁うつ病)」と呼びます。薬物療法が主な治療となりますが、周囲の人が病気について理解してサポートすることも重要です。
うつ病
気持ちが強く落ち込み、疲れやすい、考えが働かないといった症状が出ます。何事にもやる気が出ず、以前は楽しんでいた活動に対する興味や喜びを喪失することがあります。あらゆる年齢で発症する可能性があります。
双極性障がい
気持ちが過剰に高揚して極端に活動的になったり、ちょっとしたことで他人に対して怒りっぽくなったりする時期と、過度に気持ちがふさぎ込んで人生に興味がなくなる時期とが交互にみられます。その間に、気分が比較的落ち着いている時期がみられます。
てんかん
何らかの原因により、一時的に脳の電気的活動が乱れて発作が起きます。発作には、けいれんを伴うもの、全身あるいは手足などが一瞬ピクッと収縮するもの、突然意識を失うものなど、様々な種類があります。発作が起こっていない時間は普段通りの生活が可能です。また、適切な内服治療を行うことで、多くの場合は発作をコントロールすることができ、普段通りの生活を送ることができます。けいれんなどの発作が起きた場合には、まずは本人の安全を確保することが必要です。てんかんの発作が続いている場合は免許の取得ができなかったり、免許の効力が一時停止されたりすることもあります。免許の更新の際はきちんと申告しましょう。
依存症
適度な依存を逸脱し、その行為を繰り返さないと満足できず、心身に障がいが生じたり、家庭生活や社会生活に悪影響が及んだりすると依存症と診断されることがあります。代表的なものに、薬物依存、アルコール依存、ギャンブル依存等があります。ほとんどの場合、依存症の当事者は自分が依存症だと気づくことはできませんし、ひとたび依存症になると自分の意思でコントロールすることは難しくなります。依存症は治療を必要とする病気であることを、本人だけではなく、周囲の人も理解して根気強く見守ることが大切です。
適応障がい
特定のストレスが原因となり、日常生活・社会生活に支障が生じる障がいです。抑うつ気分、不安感、頭痛や倦怠感などが症状として現れます。うつ病と症状は似ていますが、ストレスの原因がはっきりしていることが特徴です。そのため、ストレスの原因を明確にし、そのストレス状況を改善する、もしくはストレス状況から離れることが一番の治療になります。
パニック障がい
突然、胸が苦しくなったり、めまいや動悸、手足が震える、といった発作が起きて生活に支障が出る障がいです。このような発作をパニック発作といいますが、次第に「またパニック発作が起きたらどうしよう」という不安が消えなくなります。その不安を「予期不安」といいます。薬物治療だけではなく、認知行動療法などの心理療法も治療には有効とされています。
パーソナリティ障がい
大多数の人とは違う反応や行動をすることで本人が苦しんだり、周囲が困ったりする場合に診断されます。ものの捉え方や考え方、感情のコントロール、対人関係といった種々の精神機能の偏りから生じるものです(みんなのメンタルヘルス,厚生労働省)。パーソナリティ障がいは、さらに10種類に細分化され、また、うつ病や不安障がいなど、その他の精神障がいを抱えていることもあります。合併している精神障がいの治療も行いながら、時間をかけて治療を受けることが必要になります。
参考URL:厚生労働省 パーソナリティ障害|こころの病気を知る|メンタルヘルス
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_personality.html
高次脳機能障がい
交通事故や脳血管障がい、脳腫瘍などにより、脳にダメージを受けることで生じる精神機能障がいです。ダメージを受けた箇所によって、物覚えの悪化 (記憶障がい)、読み書きや会話が困難な状態になる(失語症)、集中力の低下(注意障がい)、順序立てた作業が困難になる(遂行機能障がい)、感情の抑制機能の低下 (社会的行動障がい)などの症状が現れます。リハビリテーションの専門医等に相談し、「できること」「配慮事項」を明確にして対応を検討します。
発達障がい
自閉症スペクトラム障がい
自閉症スペクトラム障がいの人は、他者とコミュニケーションをとったり関係を持ったりすることが苦手です。また、行動、関心や動作のパターンが限定的で、多くの場合、ルーチンに沿って行動します。そのため、見通しの立たない状況では強い不安を感じることがあります。一定の幅(スペクトラム)をもった疾患群と考えられていて、かつては自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障がいなどと細分類されていましたが、現在はいろいろな発達障がいをまとめて自閉症スペクトラム障がいとみなしています。
学習障がい
「話す」「理解する」といったことには何ら問題がなく、「読む」「書く」「計算する」など特定の機能が、努力しているにも関わらず極端に苦手です。知的障がいとは異なり、知能が高い場合にも生じます。特定の機能に限って障がいがみられるのが学習障がいで、認知機能全般に障がいのみられるものが知的障がいです。苦手な部分に対しては個別指導などで対応し、他の人よりも得意なことはみんなと同じ教室で勉強するなどの工夫が必要です。
注意欠如・多動症(注意欠陥/多動性障がい)
「不注意(活動に集中できない、気が散りやすい、物を失くしやすいなど)」「多動性・衝動性(じっとしていられない、静かに遊べない、待つことが苦手など)」を主な特徴とする発達障がいです。不注意が強く現れる不注意優勢型、多動性・衝動性が強く現れる多動性・衝動性優勢型、双方が同程度現れる混合型の3タイプに区別することができます。
知的障がい
問題解決、計画、抽象的思考、判断などの知的機能の発達に遅れがみられ、日常生活の様々な行動が支援を必要とする状態をいい、軽度、中等度、重度、最重度に分類されます。知的機能は知能検査によって測られ、IQ70未満が低下と判断されます。
身体障がい
視覚障がい
視覚が日常生活などの場において不自由を強いられるほどに弱い(もしくは全くない)という目の障がいです。障がいの状態は様々で、「視界の範囲が狭い」「視界の中心部分が欠損して目が見えない」などがあります。視力がゼロの全盲の方の割合は、視覚障がい者の中では約20%と言われています。
聴覚障がい
聴覚障がいは目に見えない障がいの一つです。生まれつき耳に障がいがある「先天性聴覚障がい」と病気や事故等で耳に障がいがある「後天性聴覚障がい」などの違いにより、コミュニケーションの方法は異なります。例えば、わずかに聴力が残っている場合、会話を聞き取り発音もできるケースがあります。1人ひとりに合わせたコミュニケーション方法を知ることが大切です。
音声機能、言語機能障がい
声や言語を発することができないことにより、意思疎通が困難であったり、音声を全く発することができないか、発声しても言語機能が喪失している障がいです。身体障害者福祉法に規定されている音声機能、言語機能障がいは、程度により3級と4級に区分されます。
肢体不自由
上肢・下肢・体幹の機能の一部、または全部に障がいがあり、日常の動作や姿勢の維持に不自由のある状態です。身体障がい者の中でも、肢体不自由が最も多い割合を占めています。
内部障がい
体の内部に障がいがあること、具体的には「心臓機能障がい」「腎臓機能障がい」「呼吸器機能障がい」「膀胱・直腸機能障がい」「小腸機能障がい」「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障がい」「肝臓機能障がい」の7つがあります。身体障がい者福祉法では医学的基準により1級~7級に区分されますが、必ずしも仕事を行う能力とは一致していないため、それぞれの障がいの内容を細かく把握し、必要な配慮を検討することが求められます。
参考文献:二見武志『障がい者雇用の教科書』太陽出版、2015年
仕事選びと仕事をする上でのポイントについて
精神障がい
仕事の選び方
人によって診断や症状が違うため、「精神障がいの方はこの仕事に就くと良い」といった職業はありません。一方で、精神障がいの方によく見られる共通の困り感としては「対人関係で悩みやすい」・「疲れやすい」・「環境適応に時間がかかる」等があり、業務内容やスキル面とは別の部分で大変さを感じる方も多いようです。
そのため、就労を目指す際には、「どういう仕事が向いているか」というスキル面だけでなく、障がいがあることを職場に伝えておくか、伝えないか、といったところから考える必要があります。「自分にはどういう困り感があるか」・「どういう環境なら働きやすいか」という理解も進めておきましょう。その際、「疲れやすいため最初は短時間勤務から始めたい」等、必要な配慮について企業に相談することも重要です。
仕事をする上でのポイント
【無理をしすぎない】
Cocorportを利用されている方のお話を伺うと、
「NOといえず業務をまかされ、疲れてしまう」
「『上司や同僚に相談できず自分で何とかしなければ』と、ついつい頑張りすぎて、ふとした瞬間に疲れがどっとやってくる。その結果体調を崩してしまう」
「人混みが苦手だけど、通勤時間に間に合わせるために、無理して満員電車に乗り続け疲弊して体調を崩してしまう」
というお話をよく聞きます。
障がいをオープンにして働く場合は、相談できる環境がある会社や通勤時間に配慮がある会社等事前に確認しておくこともポイントになります。また、面接等で会社側と話ができる際には、「配慮してほしいこと」をしっかり伝えることが重要になります。そのため「頑張りすぎないためにはどのような配慮が必要なのか」をあらかじめまとめておくのがよいでしょう。障がいを伝えずに働く場合は、会社には配慮する義務がありませんので、配慮を求めるのであればオープンにして働く方がおすすめです。
発達障がい
仕事の選び方
発達障がいの特性は一人ひとり違いますので、「発達障がいの方にはこの仕事が向いている」という共通した正解はありません。重要なのは、自分の特性がどういうものか(得意なものは何か、苦手とする環境はどんなものか等)を充分に理解し、自分にとっての適職を見出すことです。
例えば、「多動性が強く長時間じっとしているのが苦手」という方は、座りっぱなしの事務仕事よりも、体を動かす仕事の方が向いているかもしれません。「臨機応変に行動するのは苦手だけれど、ひとつのことを長時間続けるのは得意」という方は、一日中同じことを繰り返す定型的な仕事(データ入力等)で力を発揮できるかもしれません。このように自分の得手不得手を知っていれば、自分に合う仕事や環境を選びやすくなります。
仕事をする上でのポイント
自分の特性や得手不得手を認識したうえで、自分に合った対処を実践することが重要です。自己対処だけでは難しい場合もありますので、企業に配慮・サポートしてもらうことも検討しましょう。
【自己対処の例】
- 時間管理が苦手で、約束の時間を守れない → アラーム機能を使い、気付けるようにする
- ミスや作業忘れが多い → 業務のチェックリストを作成し、できているかを確認しやすくする
- 過集中になりやすい → タイマーを設定し、定期的に休憩時間を作れるようにする 等
【企業に求める配慮の例】
- 「適当にやって」等あいまいな指示の理解が難しい → 「何を」「どのように」「いつまでに」等、具体的な指示にしてもらう
- 音に敏感で、周囲が騒がしいと集中できない → 耳栓など遮音できるツールを使わせてもらう 等
知的障がい
仕事の選び方
知的障がいの方が仕事を選ぶ時には、業務内容や職場環境が自分に合っているかどうかが非常に重要となります。症状の程度や得手不得手が人によって違うため、一概に「こうするとよい」とは言えませんが、臨機応変さや応用を求められる作業が苦手で、手順が決まっている業務を得意とする方が比較的多いようです。
自分に合う仕事や環境がわからないという方は、家族や医師・支援者などと相談し、どういう仕事を選ぶかを決めるとよいかもしれません。その際は、自分が関心を持てる業務かどうかも重視すると、モチベーションを失わずに働くことができます。
仕事をする上でのポイント
【わかりやすい支持受けの手段を確立する】
「どのような作業指示だとわかりやすいか」をあらかじめ把握しておくとよいでしょう。「自分は実際作業したほうが得意」なのか、「メモを見ながら行うことが得意」なのか、「絵や図で見たほうが分かりやすい」のか、自分に合った作業手順書を用いて業務に取り組むことで生産性の向上につながります。
【好きこそ物の上手なれ】
どの職業でも共通していますが、自分が興味のあること好きなことを仕事にすることで「飽きずに」「楽しく」業務にあたることができます。「嫌いな作業」「苦手な作業」は極力含まれない職種選ぶことで、「長く働くこと」につながります。
身体障がい
仕事の選び方
身体障がいといっても、障がいの現れ方、部位、程度は様々です。また、知覚障がいや痛みなどを随伴する障がいの有無、補装具の有無によっても、身体障がいの特性は異なります。そのため自分自身の障がいについて理解し、どのような環境であれば継続して仕事がしやすいか、よく検討して選ぶ必要があります。なお、厚生労働省の調査によると、事務的職業に就いている方が最も多く、次いで生産工程の職業、専門的・技術的職業の順に多くなっています。
参考:平成30年度障害者雇用実態調査結果
仕事をする上でのポイント
【必要なサポートを明確に伝える】
障がいの部位や程度により、必要なサポートは異なります。また、内部障がいのように周囲の人に理解してもらうことが難しい場合もあります。どのようなサポートが必要か、職場の人に具体的に伝えましょう。ただし、受けられるサポートは企業の状況により異なるため、事前によく相談することが大切です。このようなサポートを合理的配慮といいますが、合理的配慮について明確にしておくことで、お互いに気持ちよく仕事をすることができます。
難病
難病とは
「難病」は、医学的に明確に定義された病気の名称ではありません。難病と一言でいっても、病名や症状は多種多様です。
障がい者総合支援法上は、「治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障がいの程度が厚生労働大臣が定める程度である者」と規定されています。
難病のある人が仕事をするためには、治療や疾患管理と仕事を両立させることが不可欠です。そのためには、「無理なく活躍できる仕事を選ぶこと」「通院や休憩等の業務調整について職場の理解と配慮を得ること」「自己管理と職場での対処スキルを身に着けること」が重要です。
Cocorportでは、ご利用者様お一人おひとりに適した支援を提供できる体制をご用意し、就労に向けた支援を行っております。
仕事の選び方
【無理なく活躍できる仕事内容や職場環境】
無理なく活躍できる仕事とはデスクワーク等の身体的な負担が少なく休憩が比較的取りやすい仕事や、短時間労働で疲労をため込まない仕事を選択される方が多い傾向にあります。逆に立ち仕事や労務作業、流れ作業等、身体的負担が大きい仕事や休憩、通院がしにくい時間拘束力の強い仕事は続けにくいということが多く聞かれます。それぞれの症状の特性を踏まえることはもちろんですが、本人のスキルや興味に適した仕事を探すことが重要です。また、難病患者就職サポーターや職業訓練校等の社会資源を活用し、自身のスキルアップを行うことも一つです。
2005年滋賀医科大学卒業後、小児科や産業医として勤務した後に精神科へと転身。身体的、精神的症状を訴える患者を受け持つ。思春期特有の心の病気に取り組む「思春期外来」も担当しているほか、精神科系の記事執筆や監修なども行っている。
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