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【アンケートあり】うつ病での退職の手続きや流れ、退職後のポイントなどを解説
公開日:2022/11/25
更新日:2024/10/18
うつ病で退職する場合、先々の不安を感じ「今後どうすればいいのだろう…」と悩む方も多いでしょう。
現代はストレス社会といわれており、うつ病を原因に退職する人は決して少なくありません。
今回は、実際にうつ病により退職した方の声を紹介しつつ、退職手続きの流れや受給できる手当金の種類、手当金を受け取る方法までを解説していきます。
目次
うつ病で退職を考えている人へ
うつ病は誰にでも起こり得る病気であり、退職を選ぶのは決して悪いことではありません。
日本では、うつ病の生涯有病率が6.6%、つまり100人のうち約6〜7人が一生の中でうつ病を経験するという調査結果があります。また、女性の場合はうつ病を発症する割合が男性の1.6倍という調査結果もあります。米国精神医学会の統計(DSM-5)では、男性では14.7%、女性では26.1%となっており、諸外国と比較して日本はうつ病を発症する人が比較的少ない傾向にあります。
しかし、2021年の世界的な医学雑誌「ランセット」による報告では、日本でも近年の新型コロナウイルスの流行で、うつ病にかかる率が10%も増えたと推測されており、皆さんの身近でもうつ病で苦しんでおられる方は多いのではないでしょうか。
うつ病で仕事を続けるのが難しい場合は、無理をせずに休職や退職を検討することが重要です。うつ病から回復するには早めに専門家へ相談し、十分に休む必要があります。
参照:厚生労働省 みんなのメンタルヘルス「こころの病気を知る|うつ病」
うつ病で退職した人、休職した人、転職活動した人の声
実際にうつ病で退職した人の割合はどの程度なのかを知るため、アンケート調査を行いました。
ここでは、うつ病が原因で退職した人、退職しなかった人、転職活動した人たちのそれぞれの声を聞いて参考にしましょう。
【アンケート概要】
調査時期:2022年8月30日~9月2日
回答数:198件
調査手法:インターネット調査
調査対象:うつ病と診断された方
調査実施:インターネットリサーチ会社
うつ病になって退職した人の割合
うつ病と診断された方へのアンケート調査を行った結果、以下のような割合となりました。
質問:うつ病と診断された時、仕事はどうしましたか?
うつ病と診断されて退職した方は全体の30%程度ですが、診断の直後に「休職」という選択をした方の中にも結果的に退職した方がいます。そのため、うつ病による退職者は決して少なくないでしょう。
うつ病になって退職した人の声
うつ病になり退職を選んだ理由として多く挙げられていたのは下記の通りです。
- ・仕事を続けられる状況ではなかったため
- ・医者に退職を勧められたため
- ・症状が悪化するのを防ぎたかったため
休職しつつ薬を飲みながら療養していたものの、休職期間の終了が迫り、そのまま退職したとの声もあります。
また、退職を願い出た際に上司から部署異動を提案されたが「同じ会社に行きたくなくて辞めた」という人もいます。実際に退職して「しんどいながらも心に少し余裕ができた」「ほっとした」と、退職してよかったとの感想も寄せられていました。
うつ病の原因が職場にある場合(特に同じ職場に復職することになるときには)、一旦休職しても復職後のことを考えてしまい、十分に休養しづらい傾向があるようです。
うつ病になって退職しなかった人の声
次は、うつ病発症後に退職しなかった人の声をご紹介します。
退職しなかった理由として、下記回答があがりました。
- ・主治医と相談し残業制限が設定されたため
- ・手当をもらいつつ療養できて回復が早かったため
- ・有給休暇や傷病手当金を利用してゆっくり休養できたため
- ・異動で精神的に楽になれたため
アンケート結果から、傷病手当金などを利用しつつ十分な休養をとること、復職する場合には、配置転換や残業制限などの負担軽減について会社とよく相談しておくことが大切だと分かります。
最後に、うつ病になった後に転職活動をした人の声をご紹介します。
転職活動をした理由として、下記回答があがりました。
- ・どうにかして働く必要があったため
- ・環境を変えるため
- ・休み続けていると逆に悪くなりそうだったから
長く休むとお金がなくなる不安から、多少つらくても「働かざるを得ない」と考える人は多いでしょう。
また、転職活動で困ったことがあったかという質問に関しては下記の回答がありました。
- ・退職理由を聞かれた時、返答に困った
- ・うつ病がネックになり面接に落ちることが多かった
体調が回復していたとしても、転職活動をする中で困難に感じることは多いようです。そのような転職活動の際でも、就労移行支援を利用すれば、希望の職場へ転職できる可能性が高まります。
■就労移行支援の認知度・利用度
就労移行支援事業所は、うつ病などを含めて、障がいのある方の安定した就労を目的とし、各地に設置されています。
しかし、就労移行支援の認知度と利用度のアンケート調査では、以下のような結果となりました。
就労移行支援の認知度 | 割合 |
---|---|
知らなかった | 57.0% |
知っていたが利用しなかった | 29.2% |
知っていて利用した | 5.0% |
その他 | 8.8% |
就労移行支援の存在を知らなかった人が最も多く、知っている人の中にも利用していない人が多数を占めています。
就労移行支援事業所では、個別の支援プログラムによる幅広いサポートがあり、ストレスへの対処のしかた(ストレス耐性の強化)などを学ぶことも可能です。この機会に、ぜひ確認しておきましょう。
うつ病で退職しようか迷っている人へ向けてアドバイス
アンケートに回答していただいた方々の励ましの声とアドバイスを紹介していきます。
- ・代わりは絶対にいるから、休職しても大丈夫
- ・一番大切なのは仕事ではなく自分の体と健康
- ・無理しないで休むことが大切
- ・うつ状態の時は判断力が低下しているので、退職・離婚・転居のような大きな決断事は避けたほうがいいと思う
- ・うつ病の原因が職場ではないのなら、退職しないほうがいい場合もある
うつ病になる原因は人によって異なるため、信頼できる周囲の人や主治医などとよく相談して自分に合った選択をするのがおすすめです。
うつ病による退職手続きの流れ
うつ病により退職する意思はあるものの、どんな手順で退職すればいいか分からず、困っている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、うつ病のために退職手続きを行う際の具体的な流れについて解説していきます。
- 医療機関を受診しておく
- 会社に退職の意思を伝える
- 会社から離職票などを受け取る
- 年金と保険の切り替え手続きを行う
- 雇用保険などの手当を申請する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①医療機関を受診しておく
うつ病で退職する際、会社によっては医師の診断書を求められる場合があります。一般的に診断書は必須ではありませんが、会社によって異なるため就業規則を確認しましょう。期間に定めのある有期雇用などの場合でも、医療機関の診断書を提示することで会社の合意を得られやすくなります。
また、傷病手当金を受ける場合、診断名や初診日を記載した医師の診断書が必要です。
そして、失業保険(雇用保険の基本手当)を受ける際に、医師の診断書などを参考に「正当な理由(心身の障がい等)により離職した」と認められると、「特定理由離職者」という扱いになります。これにより、自己都合退職の場合に2ヶ月間発生する給付制限が免除され、給付日数が増える場合があります。
傷病手当や失業保険などの観点から、受診の際に診断書をもらっておくと良いでしょう。
②会社に退職の意思を伝える
次に、退職したい旨を直属の上司等に伝え、退職届の準備をしましょう。
退職届を提出したら、有休消化や引継ぎ事項について確認しておきましょう。通常は、休職制度や有給などを利用しつつ退職するという流れになります。
③会社から離職票などを受け取る
雇用保険被保険者離職票(離職票)は、失業保険の給付申請手続きに必要な書類です。退職する際は、会社から離職票を受け取り早めに失業給付の申請をしましょう。
退職時に書類を一式受け取った場合は内容を確認し、離職票が入っていない場合は後日送られてくるか必ず確認しておきましょう。
④年金と保険の切り替え手続きを行う
退職する場合、厚生年金から国民年金、健康保険から国民健康保険(もしくは健康保険の任意継続や家族の健康保険(被扶養者))への切り替え手続きが必要です。居住地の市区町村役場等で手続きが可能です。
切り替え手続きには、運転免許証やマイナンバーカードなど本人確認書類をはじめ、退職日・社会保険資格喪失日などを確認できる書類が必要です。
手続きを行う期間は、退職した翌日より14日以内(任意継続の場合は、20日以内)となっています。
参考:日本年金機構「国民健康保険等へ切り替えるときの手続き」
⑤雇用保険などの手当を申請する
退職後に再就職する意思はあるものの転職先が決まっていない場合、雇用保険の基本手当(いわゆる「失業保険」)を申請することができます。
「うつ病になりすぐに仕事はできないけれど、可能であれば働きたい」という方は、その旨を申請することで受給期間が延長される可能性もあります。退職後は忘れずに雇用保険の申請手続きを行いましょう。
うつ病による退職時に、受け取れる可能性のある手当金
退職すると収入源が断たれるため、金銭面や生活面において不安を感じる人は多いでしょう。
ここでは、退職後に受け取れる可能性のある手当金について解説していきます。退職前に確認しておきましょう。
- ・傷病手当金
- ・失業保険
それぞれ詳しく見ていきましょう。
傷病手当金
傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やけがで仕事を休んだ時、生活を保障するために支給される心強い制度です。
まずは、傷病手当金の概要、対象者、金額・受給できる期間、退職後に受け取る条件について、それぞれ解説していきます。
■傷病手当金とは
傷病手当金は、うつ病をはじめとする病気やけがなどで長期にわたる休職が必要となり、会社から十分な給与を受け取れない時に支給される制度です。被保険者だけでなく、その家族の生活も保障するために設けられています。
基本的に仕事を休職した時、つまり雇用契約中に受け取ることが可能です。しかし退職後も必要な条件を満たしていれば継続して受給できます。
参考:全国健康保険協会「傷病手当金について|よくあるご質問」
■傷病手当金の対象となる人
傷病手当金の支給対象者となるには、下記4つの条件を全て満たしている必要があります。
- ・業務外における病気・けがによる休職
- ・仕事に就けない状態である
- ・連続する3日を含む4日以上勤務ができない
- ・休業期間中に事業主から給与の支払いがない
1つでも該当しない項目があれば受給対象外となります。業務が原因でうつ病を発症した場合は、労災保険の休業(補償)等給付が適用されます。
傷病手当金は会社の健康保険に加入している方なら、パートやアルバイトなどの雇用形態を問わず誰でも受給可能です。
国民健康保険は任意給付制度となっており、各自治体あるいは各国民健康保険組合によって受給されるか否かが異なります。居住地の行政窓口か国民健康保険組合への確認が必要です。
参照:厚生労働省「休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続き」
参照:全労済協会「基礎知識(3)|医療保険編「基礎知識」
参照:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
■傷病手当金の金額と受給できる期間
傷病手当金の場合、支給される金額は人によって異なりますが、以下の計算式で算出可能です。
【1日あたりの支給額の計算式】
支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準月額の平均金額÷30日×2/3
たとえば、12カ月間の標準月額が25万円の場合は(250,000÷30×2/3≒5,555円)となり、1日あたりの支給額が5,555円であることが分かります。毎月支払われている給与の約3分の2が支給されると認識しておくとよいでしょう(期間が12カ月未満の人は、別の計算方法で支払額が決定されます)。
詳細は「全国健康保険協会(協会けんぽ)」のホームページにてご確認ください。また、支給期間は支給開始日から最大で1年6カ月となっています。
参照:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
■傷病手当金を退職後に受け取る条件
会社を退職し社会保険の資格喪失後、傷病手当金を継続して受け取るには以下の条件を満たす必要があります。
- ・資格喪失日の前日まで、被保険者期間が1年以上あること
- ・資格喪失となった際、既に傷病手当金を受けていた、または受けられる状態にあった(「連続した3日」を含む4日以上休んでいるなど)
上記条件を満たしていれば、退職後も傷病手当金の受給が可能です。
ただし、受給期間の1年6カ月以内に復職した場合、その後再び働けない状態となっても傷病手当金は支給されません。
また、退職日当日に出勤した場合も、継続給付を受ける条件から外れてしまいます。資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金は受け取ることができない点は押さえておきましょう。
失業保険(雇用保険の基本手当)
失業保険は自身の都合により退職した、もしくは会社が倒産して仕事を失った場合などに手当が受けられる大切な制度です。
ここでは失業保険の概要、対象者、金額・受給できる期間・退職後に受け取る方法までを解説していきます。
■失業保険とは
失業保険の正式名称は「雇用保険(の基本手当)」といいます。職を失った人が安定した生活を送りつつ、再就職に向かうまでの生活を支える支援制度です。
新しい職に就くまでの生活基盤の支えとなるため、失業期間中でも金銭面を心配せず安心して職探しができます。
ただし、傷病手当金を受けている人は同時受給できない点に注意しましょう。
参照:厚生労働省「ハローワークインターネットサービス|基本手当について」
■失業保険の対象となる人
失業保険を受給するには、ハローワークが定めている「就職に対し積極的な意思があり、いつでも仕事できる能力はあるが、転職先が見つからない」という前提条件が必要です。そのため、就職する意思がない、もしくは病気・けがですぐに働けない、妊娠・出産・育児で職に就くのは難しいといった場合は、対象外となります。
また、以下も受給条件に含まれます。
- ・以前の勤務先で雇用保険に入っており、離職日以前の2年間に加入期間が通算12カ月以上ある
- ・特定受給資格者または特定理由離職者であり、離職日以前の1年間に、被保険者期間が通算6カ月以上ある場合
■失業保険の金額と受給できる期間
失業保険においては、受給できる1日あたりの金額を「基本手当日額」と呼んでいます。基本手当日額は、離職前6カ月間の給与合計を180で割り、算出した金額の約50〜80%となります。
失業保険手当の受給額は以下の計算式で算出することが可能です。
【1日あたりの支給額の計算式】
基本手当日額=賃金日額(退職前6カ月の賃金合計/180)×給付率(50~80%)
また、離職日における年齢や賃金日額によっても給付金額の計算が多少異なってきます。さらに受給期間(給付日数)も、年齢や被保険者期間により細かく区分けされているため確認が必要です。基本手当の受給期間も90〜360日となっており、人によって異なります。
受給期間は原則として離職翌日から1年間とされているものの、その間に病気やけがの他、妊娠、出産、育児などの理由によって連続30日以上働くのが困難となる可能性もあります。その場合、出勤できない日数分を延長して受給することが可能です。
■失業保険を退職後に受け取る方法
退職後に失業保険手当を受け取るためには、まず退職した職場より発行される雇用保険被保険者離職票(離職票)をハローワークに提出する必要があります。
以下の手順を踏んで受け取りましょう。
- 退職後、会社から「離職票」を受け取る
- 離職票・身分証明書・通帳等の必要書類を準備しハローワークへ提出する
- ハローワークで詳細を案内してもらい手続きを進める
失業保険の手続きに必要な書類は5つです。
- ・雇用保険被保険者離職票(1・2)
- ・個人番号確認書類(マイナンバーカードまたは通知カード、個人番号の記載のある住民票)
- ・身元確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)
- ・証明写真(正面上三分身、横2.5cm×縦3.0cm)2枚
- ・本人名義の預金通帳(普通預金)またはキャッシュカード
指定されている身元確認書類がない場合、以下の中から2種類の異なる書類が必要となります。
- ・国民健康保険被保険証もしくは健康保険被保険者証
- ・住民票記載事項証明書(住民票の写しもしくは印鑑証明書)
- ・児童扶養手当証書
参考:ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
うつ病で退職した人が再就職を目指す場合に利用できる「就労移行支援」
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