「ADHDかも？」と感じたら｜基礎知識や特性、日常生活での対処法をご紹介

そんなふうに考えてしまったことはありませんか？

本記事では、ADHDを疑ったときに自分でできる対処法を順にご紹介します。「ADHDかもしれない」と不安をお持ちの方にとってヒントになる情報があるかもしれません。お悩みの方は、ぜひご一読ください。

ADHDの特性

まずはADHDがどんなものなのか知るところから始めましょう。

ADHDは発達障がいの一種であり、日本語では「注意欠如・多動性障がい」といいます。発達障がいの原因は、現在はっきりとはわかっていません。一説としては、大脳の前頭前野の機能調節の偏りや脳内の神経伝達物質の不足といわれています。ただ、ひとつわかっていることは、先天的な脳機能障がいであるということです。

ADHDは「不注意」「多動性」「衝動性」という特性により生活に支障が出ている状態をいいます。特性が現れていても本人に困り感がなく、生活に支障がなければ発達障がいとは診断されません。それぞれの特性を詳しく見ていきましょう。

不注意

注意を持続することが難しい、忘れ物や失くし物が多いなどの症状があります。子供の頃は忘れ物が多かったり、授業中にキョロキョロしてしまう傾向がみられます。ですが、「次からは気をつけようね」で済んでしまうことが多く、大きな困りごとを抱えることは少ないです。

しかし、大人になり働き始めると、「仕事に使うものを忘れた、失くした」「上司や客の話を聞いていなかった」などの特性による困りごとは大きな問題となります。

多動性

子供のうちは机や椅子をガタガタと揺らしたり、常に何かを触っていないと落ち着かないなどの症状が見られ、大人になると貧乏ゆすりが目立つなどじっとしていられない傾向にあります。また、何かを期限内に仕上げることも不得意とするケースも多々見られます。

衝動性

思ったことをすぐに口にしてしまい、会話のキャッチボールを苦手とします。また、自身の欲求をコントロールすることも苦手で、自分の思い通りにならなかった場合すぐにイライラしてしまいます。そのイライラを発散するために大声を出したり、モノに当たるケースもあります。

大人の発達障がいが増えている

もしもADHDなどの発達障がいであれば、先天性であるため幼少期から前述のような特性が出現していたと考えられます。特性が出現していても、「子どもは忘れ物が多いもの」「おしゃべりでおもしろい子ども」と受け止められ、本人や保護者に困り感がなければ見過ごされてしまいます。

また、現在の大人が子どもだった頃は、知的障がいのない発達障がいというのはあまり認知されていませんでした。それゆえに見逃されてきた経緯もあります。

しかし、大人になり仕事上で「忘れていた」「聞いていなかった」といった理由のミスや、ケアレスミスなどの失敗が頻発すると、仕事に支障が出る上に信頼も損なってしまいます。フォローしてくれる保護者や先生はおらず、社会人としての複雑な人間関係や仕事に直面して初めて、問題を抱える方も少なくないのです。

近年は発達障がいの認知度も高まり、大人になってから発達障がいと診断される方が増えています。

ADHDを疑ったら｜対処法①自分の困りごとを整理する

まずは、自分が現在どんな状況でどんなことに困っているのか、整理してみましょう。

大人の困りごとの例

あわせて、子どもの頃の様子も振り返ってみましょう。ADHDなどの発達障がいは先天性のものであるため、幼少期からその特性が現れていることが多いです。

子どもの困りごとの例

ADHDのある子どもの中には、家や学校で叱られてしまうことが多いため、自尊心が低下してしまうことが多々あります。この場合、うつ病や不安障がいといった二次障がいを合併しやすくなります。

子どもの頃を振り返ることは、ADHDの診断にはとても大きなヒントとなります。養育者（親）や兄弟などに話を聞いたり、学校の成績表を見返してみたりするとよいでしょう。

ADHDを疑ったら｜対処法②困りごとの対策を立てる

整理した困りごとに対して、自分に合った対策をたててみましょう。以下の例を参考に対策を考えてみてください。

仕事上の困りごととその対策

ここでは、仕事上の困りごととその対策をご紹介します。

【気が散りやすく、仕事に集中できない】

卓上用のパーテーション（間仕切り）を利用したり机の上の不要なものを片付けたりして、余計なものが視界に入らないようにする。耳栓やノイズキャンセリングイヤホン（ヘッドフォン）をして、音を遮断する。

【仕事の締め切りを忘れてしまう】

スマートフォンのリマインダー機能を利用する。ふせんなどにやるべきことを書き出し、可視化する。

【仕事の優先順位をつけられない】

上司や同僚に助言を求めたり、優先順位を聞いてはっきりさせる。

生活上の困りごととその対策

次に、日常生活を送るうえでの困りごととその対策をご紹介します。

【日常的に忘れ物や失くし物が多い】

忘れ物防止チェックリストを作成する。小物はマグネットでドアなどに貼り付けたり、Bluetoothを利用した紛失防止タグをつけたりする。

【整理整頓が苦手である】

持ち物を減らし、物の住所を決める。1日の中で15分程度、片付ける時間を設ける。

【すぐに関心が移って、やらなければならないことを忘れる】

ささいなこともメモをとり、目につくところに貼りだしておく。

ADHDを疑ったら｜対処法③専門機関に相談しよう

もし、日常生活を送るうえで困りごとが多く「生活に支障がでているが自分ではうまく対処できない」「生きづらさを感じる」そのような場合は専門機関を頼りましょう。

病院を受診すれば詳しい検査を受けられるため（すべての精神科・心療内科で詳しい検査が受けられるわけではないので事前に問い合わせましょう）、ADHDもしくは他の発達障がいがあるかどうか診断を受けられます。病院を受診する他にも、以下のような機関に相談が可能です。

発達障がい者支援センター

発達障がい者支援センターは、発達障がいのある方やその家族に向けて総合的な支援をおこなう機関です。発達障がいがある方だけではなく、発達障がいの疑いがある方も相談でき、必要に応じて福祉制度や関係機関の紹介もおこなっています。

精神保健福祉センター

こころの健康や精神科医療に関する相談を含めた、精神保健福祉全般にわたる相談を受け付けています。対面での相談に限らず電話相談も可能です。

センターの規模により異なりますが、医師や看護師、精神保健福祉士など専門職の職員が配置されています。

保健所

こころの健康、保健、医療、福祉などに関する相談を幅広く受け付けています。対面による相談と電話相談が可能で、保健師、医師、精神保健福祉士など専門職の職員が対応します。

発達障がいのある方の中には、人に頼ることを苦手とする方もいます。しかし、困ったときに人を頼ることはとても重要な対処法のひとつであり、悩みを解決する糸口がみつかるかもしれません。機関によっては自宅への訪問支援などもできるため、引きこもりになってしまっている方などでも支援を受けることができます。

困り感やストレスは、二次障がいとしてうつ病などの精神障がいを引き起こしてしまう場合も多くあります。状況が悪くなる前に、ぜひお近くの機関に相談してください。

岡田 夕子（おかだ ゆうこ）
精神保健指定医/日本精神神経学会専門医・指導医

2005年滋賀医科大学卒業後、小児科や産業医として勤務した後に精神科へと転身。身体的、精神的症状を訴える患者を受け持つ。思春期特有の心の病気に取り組む「思春期外来」も担当しているほか、精神科系の記事執筆や監修なども行っている。