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ASD(自閉スペクトラム症)に向いている仕事は?8つの業種や特性もご紹介
公開日:2022/03/30
更新日:2024/10/18
「今の仕事が向いていないのか、継続して長く働けない」
「職場での困りごとが多い」
ASD(自閉スペクトラム症)の方の中には、このような就労に関する悩みをお持ちの方もいるかもしれません。
本記事では、困りごとに対してできる工夫やASDの方に向いている可能性がある仕事、頼ることができる専門の機関などをお伝えします。
(※近年の世界保健機関(WHO)などの診断基準の改訂により、「自閉症」「アスペルガー症候群」などと呼ばれてきた発達障がいは、「神経発達症」の中でも「自閉スペクトラム症」という名称へ移行しつつあります。ここでは「自閉スペクトラム症」に統一してお話を進めます。)
目次
ASDの方の2つの特性
ASDには2つの代表的な特性があります。
- ・他者とうまくコミュニケーションがとれない
- ・興味や関心が偏っている
これらの特性によって引き起こされる混乱やストレスが、うつ状態や不安、不眠などの症状につながる(「二次障がい」と呼ばれます)場合もあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
他者とうまくコミュニケーションがとれない
コミュニケーションが苦手で対人関係がうまく作れず、冗談を真に受けてしまうなど、誤解を生じやすい傾向があります。
また、空気を読むことや相手の気持ちを想像することが苦手なため、不適切な発言をしてしまうことがあります。仕事の場面では、会議などで空気を読めずに発言し、ひんしゅくを買ってしまうことも。なかには、視線が合いにくく、表情が乏しい方もいます。
興味や関心が偏っている
特定の対象に対して強い興味や関心を持ち、こだわりが強く柔軟な対応が苦手です。また、こだわりの強さや不安から「変化」に弱い傾向もあります。そのためマイルールにこだわり、「自己中心的な人」という印象を持たれることもあります。
上記の2つの特性に加え、音やにおいなどの刺激を敏感に感じてしまう「感覚過敏」、逆に極端に刺激を感じにくい「感覚鈍麻」といった特性がある方もいます。
ASDの特性がありながら仕事をしている方の声
実際にASDの特性がある方々がどのような仕事をしているのか、20〜60代の男女を対象にアンケート調査を行いました。
ここではASDの特性がある方の声を、下記の項目別に分けました。
- ・ASDの方はどんな雇用形態で働いている?
- ・ASDの方はどんな仕事をしている?
- ・ASDの方が仕事を決める際に気をつけたこと
- ・ASDの方が仕事で困ったこと
それぞれ紹介していきます。
【アンケート概要】
調査時期:2022年11月2日~11月10日
回答数:63件
調査手法:インターネット調査
調査対象:ASDの特性がありながら仕事をしている方
調査実施:インターネットリサーチ会社
ASDの方はどんな雇用形態で働いている?
まずは下記のグラフにて、ASDの方が働いている雇用形態の割合を見てみましょう。
会社勤務(一般社員)の方が34.9%と最も多く、パート・アルバイトが20.6%、フリーランス・SOHOが19.0%と続いています。
次は、それぞれの職場でどのような業務に就いているのか、仕事内容について見ていきます。
ASDの方はどんな仕事をしている?
ASDの方へのアンケート調査では、下記のような仕事をしている方がいました。
- ・CADを使用して図面作成するCADオペレーター※
(※機械や建築などの設計図を作成する仕事です) - ・YouTube動画や短編小説などのシナリオライター
- ・イヤリングやピアス、髪留めなどを作り販売するアクセサリー制作
- ・依頼されたイラストを描くフリーのイラストレーター
- ・データ入力や商品の在庫管理、発送などの単純作業
- ・Webライターとして発達障がい・障がい年金に関する記事を中心に執筆
- ・卵のパック詰めやガラス加工など、工場でのルーティンワーク
- ・経理ソフトを使う事務作業
ASDの方が仕事を決める際に気をつけたこと
ASDの方が仕事を決める際、気をつけたことに関する回答で多かったのは下記のような点です。
- ・人とのコミュニケーションを必要とする仕事は極力避けた
- ・なるべく一人で黙々とできる仕事を探した
- ・昼食を一人で食べても浮かない職場かどうか
- ・ルーティン化されている事務職に絞って選んだ
- ・イレギュラーが起こりにくい仕事を選んだ
- ・静かに働ける職場環境かどうか
- ・電話や来客対応がないかどうか
- ・在宅勤務が可能かどうか
- ・自分のキャパシティを超えそうな仕事は避けた
ASDの方が仕事で困ったこと
ASDの方が仕事で困ったことに関しては、次のような回答が多く見受けられました。
- ・マルチタスクが苦手で2つ以上のことを同時にできない
- ・お客様からの質問内容が理解できずパニック状態になった
- ・納品後、クライアントから返答がない時に対応の仕方が分からない
- ・パソコンのトラブルで資料が削除されてパニックになった
- ・分からないことが分からず、上司に聞かれても答えられない
- ・周囲が騒がしいと気が散ってしまい集中できない
- ・仕事に熱中しすぎると休憩時間が疎かになってしまう
ASDの方が抱えやすい仕事上の困りごと
ASDの方はその特性により、仕事上で以下のような困りごとを抱えやすいです。
- ・急な予定の変更があると臨機応変な対応が難しい
- ・暗黙のルールを理解することが難しい
- ・場の空気を読むことが難しい
- ・相手の気持ちを想像することが難しく、不適切な発言をしてしまう
- ・職場の音やにおいなどに強いストレスを感じてしまう
これらの困りごとを完全に解決することは難しいですが、工夫により困りごとを軽減できる可能性は大いにあります。
ASDの方が仕事上でできる工夫
困りごとに対策を取ることは、困り感やストレスの軽減にとって大変重要です。
困りごとは人によりさまざまですが、以下の例を参考に、自分に合った工夫(対策)を考えてみましょう。
- ・臨機応変に対応できない時は周囲に助けを求める
- ・具体的な指示をもらうように心がける
- ・口頭ではなく、文字や図を用いて視覚的に説明してもらう
- ・思いついたことをすぐに言葉に出さず、相手に伝える前に、「もし、自分だったらこれを言われてどう感じるか」と考えてみる
- ・ソーシャルスキルトレーニング(※)を受ける
- ・音やにおいなどに敏感な場合は、イヤホンやマスクなどを利用する
※ソーシャルスキルトレーニング(SST)
例えば「あいさつをする」「頼みごとをする」などの対人関係を中心に、社会生活や日常生活のスキルを身につけるトレーニングです。認知行動療法という心理技法が基本になっており、クリニックや病院、福祉施設、就労支援施設などで行われています。「お手本」を見せてもらった上で、少しずつ対人関係の作り方を身につけることができます。
また、具体策を講じる他にも、
- ・障がいを公表する(公表して、周囲の理解や協力を求める)
- ・自分の特性を活かせる仕事を選ぶ(配置転換や転職)
といった方法があります。
障がいを公表するメリットは、周囲の理解や協力を得られやすくなり、困りごとが軽減し、働きやすい職場環境が望めることです。
デメリットは、人によっては「障がいの公表」にストレスを感じることでしょう。また、自分の障がいを公表したことで、周囲から今までと少し違った反応をされることがあるかもしれません。
自分の特性を活かせる仕事を選ぶメリットは、特性に合った仕事(例えば「対人コミュニケーションが少なくて済む仕事」など)に就くことで、これまでの困りごとやそれに伴うストレスを軽減できることです。
デメリットとしては、環境が変わるため、慣れるまではストレスを感じることがあるかもしれないことが挙げられます。
ASDの方に向いている可能性がある仕事
ここからは、ASDの方に向いている可能性がある仕事をご紹介します。
- ・経理事務
- ・プログラマー
- ・コーダー
- ・データアナリスト
- ・Webライター
- ・Webデザイナー
- ・ゲームテスター
- ・軽作業
それぞれ詳しく見ていきましょう。
経理事務
経理事務の仕事は、会社の収支やデータなどを管理するルーティンワークです。業務はパターン化・マニュアル化されているため、決まりに沿って忠実に作業できるASDの特性と合っています。
また、ASDの方はこだわりが強く集中力が高い特性を持ちます。そのため、経理以外の事務職でも来客や電話対応がなく、単純作業の仕事であれば向いている可能性は高いでしょう。
プログラマー
プログラマーはエンジニアが設計した仕様書に基づき、プログラミングを行う仕事です。プログラム言語を組み立てていき、アプリやシステムツールが作動するように作成します。
一日中パソコンに向かいプログラミングに取り組む必要があるため、集中力の高いASDの特性に向いています。イレギュラーも発生しにくいので、臨機応変な対応が苦手なASDの方に適しているでしょう。
Webデザイナー
ASDの方には視覚情報の処理が得意という特性があるため、Webデザイナーのようなクリエイティブな仕事にも向いている可能性が高いです。ただし、仕事に就くには知識や経験が必要なので、職業訓練や就労移行支援サービスを活用してスキルを習得しましょう。
Webデザイナーはフリーランスでも活動できます。フリーランスなら在宅ワークが可能となるものの、自分で収支を管理する必要があるため、簿記の資格も取得しておくと安心です。
コーダー
コーダーは、Webデザイナーによって作成されたホームページデザインをコーディングし、Web上で閲覧可能にする仕事です。集中力と正確性が求められる業務となるため、ASDの特性とマッチしています。
ホームページ作成からコーディングまで、すべてWebデザイナーが行うケースは多いものの、コーディングの業務のみ募集している場合もあります。
データアナリスト
データアナリストは情報収集やデータ分析を行うため、パソコンと向き合う時間が多い仕事です。
数字からあらゆる仮説を立てて売上データなどを分析していき、結果が出るまで何度も同じ作業を繰り返し行う必要があります。そのため、高い集中力と強いこだわりを持つASDの特性が活かされる可能性が高いでしょう。
Webライター
Webライターは情報をリサーチしながら文章を執筆し、記事を完成させる仕事です。Webライターであれば、働く時間や作業場所を自分で決められるため、自由な働き方ができます。
ASDの方は話すよりも書いて伝えることに長けているため、専門知識や興味がある分野で挑戦すれば、活躍できる可能性が高いでしょう。
ゲームテスター
ゲームテスターは別名「ゲームデバッガー」とも呼ばれており、新たに開発されたゲーム内のバグ(プログラムの不都合)を探す仕事です。
何度も同じシーンを繰り返しチェックする地道な作業なので、ゲームテスターの仕事も高い集中力が必要となります。そのため、ゲームが好きで開発に興味があるASDの方に向いている職業といえます。
軽作業
軽作業は、荷物の仕分けや梱包、またはデータ入力やピッキング作業などの簡単な仕事です。同じ作業を繰り返し行う業務ですので、集中力や正確性が求められます。
未経験の方もすぐに始められますし、人とのコミュニケーションは必要最小限です。そのため、集中力が高く正確性を追求するASDの特性にマッチしています。
ASDの方に向いていない可能性がある仕事
ASDの方に向いていない可能性があるのは、下記のように来客や電話対応、取引先との交渉が必要な仕事です。
- ・レジ打ちやウエイターのような接客業
- ・営業職
- ・総務職
- ・コールセンター
- ・オペレーター
特に、イレギュラーが発生しやすくマルチタスクを必要とする仕事は臨機応変な対応が求められるため、ASDの方に向いていない可能性が高いです。予測していなかったトラブルが生じた際に、パニックに陥り仕事ができなくなる可能性も否定できません。
ただし、コールセンターやオペレーターなどの対人業務であっても、しっかりとマニュアル化されている場合は、問題なく仕事ができるケースもあります。
ASDの方の仕事探しのコツ
ASDの方が継続的に働くためには、自分の体調に合わせた勤務体制を選ぶことと、一人で抱え込まず誰かに頼ることが重要です。そんな仕事探しのコツをご紹介します。
短時間勤務を選択する
自分と職場との相性を確かめるために、まずはアルバイトやパートタイムなどの短時間勤務から始めてみましょう。無理せず新しい仕事に身体を慣らすことができるため、職場に定着しやすいというメリットもあります。
将来的に正社員登用を希望するのであれば、採用前にそのような制度があるか職場に確認しておきましょう。
障がい者雇用枠での就労を検討する
障がいのある方の雇用対策として、障害者雇用促進法により法定雇用率が定められています。この制度により設けられている採用枠が「障がい者雇用枠」であり、障がい者雇用枠の求人に応募するためには障がい者手帳が必要です。
障がい者雇用枠で就労する場合、障がいを公表するため「合理的配慮」を受けやすくなります。合理的配慮は、障がいの種類や障がいの特性に応じて起こる困りごとなどに配慮することです。
■企業の合理的配慮の一例
下記は合理的配慮の一例です。
- ・ラッシュ時刻の通勤を避けるため、フレックスタイム制や時差通勤を認める
- ・通院時や体調不良時は、勤務時間や休憩時間を調整する
- ・あいまいな指示を避け、マニュアルを用意する
- ・職場でのサポート体制を整える
障がい者雇用枠で就労するデメリットは、一般雇用枠と比較すると、求人の数が少ないことや給与が低いことなどが挙げられます。
また、障がい者雇用枠での採用は障がいがあることを職場に公表することと同義であるため、抵抗を感じる方もいらっしゃるでしょう。体調を優先して自分のペースで働きたい、障がいと付き合いながら継続して働きたいという方は、合理的配慮を受けられる障がい者雇用枠での就労を検討してみましょう。
専門の機関を頼る
障がいのある方を専門に支援する機関では、ASDなどの神経発達症に詳しい職員が配置されていたり、職業訓練などの手厚い支援を実施したりしています。
誰かに頼ることは時間も手間もかかるため、面倒に感じる方もいるかもしれません。しかし、障がいとうまく付き合っていくには、悩みを一人で抱え込まず相談することも大切です。多くの事例に対応している専門の機関であれば、悩みを解決する糸口がきっと見つかるでしょう。
次項では、ASDなど神経発達症の方が頼れる機関をご紹介します。
ASDの方の仕事のサポートをする就労支援事業所とは
就労を目指す障がいのある方を対象に、職業訓練プログラムなど就職に関する支援が幅広く実施されています。
就労支援事業所では、下記のような福祉サービスを提供しており、ご本人に合った支援サービスを選ぶことが可能です。
不安や困りごとは一人で抱え込まず、ご自身に合った支援機関、支援制度を積極的に利用しましょう。
- ・就労移行支援
- ・就労継続支援A型
- ・就労継続支援B型
- ・就労定着支援
それぞれ詳しく見ていきましょう。
就労移行支援
就職に必要な知識やスキルを向上するための訓練や、求職活動に関する支援などを行います。利用期間は2年です。
対象者は原則として、通常の事業所(一般企業)に雇用が可能と見込まれる18歳〜65歳の障がいや難病のある方です。
参照:厚生労働省「各支援機関の連携による障害者就労支援マニュアル」
就労継続支援A型
雇用契約を結び給料をもらいながら、就職に必要な知識やスキルを身につける訓練を行います。
対象者は65歳未満で、就労移行支援を利用しても就職につながらなかった方や、特別支援学校を卒業後に就職活動を行っても就職につながらなかった方です。
就労継続支援B型
A型と同様に知識やスキルを身につける訓練を行いますが、B型では雇用契約を結びません。非雇用のため給料は発生しませんが、作業分の工賃を受け取ることができます。
対象者は、就労移行支援を利用しても就職につながらなかった方や、一定の年齢に達している方などです。
就労定着支援
就職先の職場環境や業務に順応し、継続して働くことができるよう支援します。
具体的には、職場で悩みやトラブルが生じた際に、就労定着支援員がご本人と職場を仲立ちし、アドバイスや指導などの支援を行います。
就労支援に関することは「ココルポート」へ
本記事では、ASD(自閉スペクトラム症)の方に向いている仕事の特徴などを解説しました。ASDの方が頼ることができる専門の機関の1つとして就労支援事業所をご紹介しましたが、興味がある方はぜひ一度「ココルポート」にご相談ください。
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